香港、金融都市としての復調は本物か? 国安法施行5年、本土依存の課題と国際的な懸念

2025-06-30
香港、金融都市としての復調は本物か? 国安法施行5年、本土依存の課題と国際的な懸念
日本経済新聞

香港国家安全維持法(国安法)施行から5年。中国政府は香港を国際金融都市として「復調」していると喧伝していますが、その実態は複雑です。1~6月の香港取引所の新規上場調達額は世界トップを記録するなど、目覚ましい成果を上げています。しかし、その成長の裏には、中国本土企業の資金流入への強い依存、そして国際社会からの懸念が影を落としています。

国安法施行後の変化

国安法は、香港の自由と自治を著しく制限し、民主化運動を抑圧しました。これにより、多くの外国企業が香港からの撤退を検討し、国際的な投資家の信頼も揺らいでいます。中国政府は、国安法を「香港の安定と繁栄をもたらす」と主張していますが、その効果は限定的であるという指摘が多く聞かれます。

本土流入への依存

香港取引所の調達額世界トップという記録は、主に中国本土企業の大型上場によって支えられています。これは、中国本土市場の規制を避けるため、香港を資金調達のプラットフォームとして利用しているケースが多いため、香港経済の持続可能性にとって大きな課題となります。本土市場の動向に左右されやすいというリスクを抱えているのです。

かつての国際色と現在の状況

かつての香港は、「東のニューヨーク」とも呼ばれ、国際的な金融機関や投資家が集まる場所でした。しかし、国安法以降、国際色は後退し、自由な経済体としての評判も失われつつあります。外国企業の撤退や投資の減少は、香港経済の活力を奪い、長期的な成長を阻害する可能性があります。

中国政府の主張と国際社会の懸念

中国政府は、「香港は世界で最も自由な経済体という評判を取り戻し、国際金融センターの地位は安定した」と主張しています。しかし、国際社会からは、国安法による人権侵害や自由の抑圧に対する強い懸念が表明されています。国際的な投資家は、香港の政治的なリスクを考慮し、投資先を見直す動きも出ています。

今後の展望

香港が再び国際金融都市としての地位を確立するためには、中国政府は国安法の運用を見直し、自由と自治を尊重する必要があります。また、外国企業や投資家が安心してビジネスを展開できる環境を整備することが重要です。香港の未来は、中国政府の政策と国際社会の評価にかかっていると言えるでしょう。

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