スポーツ界を蝕む「呪い」とは? 米国研究者が暴く、ジェンダー検査導入の闇と21世紀スポーツの課題

新幹線内での読書が、スポーツ界の根深い問題に目を向けさせてくれた。米国人研究者による「アザー・オリンピアンズ 排除と混迷の性別確認検査導入史」(勁草書房)を手に取り、読み進めるうちに、その見解の鋭さに圧倒された。
この本は、オリンピックにおける性別確認検査の導入史を丹念に追跡し、その過程で露呈した排除と混乱、そしてスポーツ界が抱えるジェンダーに関する深い問題を浮き彫りにしている。研究者は、スポーツ界関係者の「見通しの甘さ」が、単なる過ちではなく、「呪い」として、20世紀だけでなく21世紀にも引きずられると指摘する。
なぜ、このような「呪い」がスポーツ界につきまとうのだろうか? その背景には、スポーツにおけるジェンダーの固定観念、科学的根拠に基づかない性別診断、そして、その結果として排除されてしまうアスリートたちの存在がある。
本書は、性別確認検査の歴史を紐解きながら、その問題点を具体的に提示する。初期の検査方法の不確実性、人種や民族によるバイアス、そして、アスリートの尊厳を踏みにじるような不当な扱いなど、数々の問題点が明らかになる。これらの問題点は、現代のスポーツ界においても依然として残っており、解決に向けた具体的な議論を促している。
しかし、問題の認識だけで解決できるものではない。スポーツ界は、ジェンダーに関する固定観念を打破し、多様性を尊重する姿勢を確立する必要がある。そのためには、科学的な根拠に基づいた性別診断の導入、アスリートの権利保護、そして、ジェンダーに関する教育の推進が不可欠となる。
本書は、スポーツ界が抱えるジェンダー問題を深く考察するための重要な一冊である。この「呪い」を解き放ち、より公正で多様性のあるスポーツ界を築くために、私たち一人ひとりが問題意識を持ち、行動を起こす必要がある。
大阪での取材先で、本書の内容をさらに深く掘り下げ、スポーツ界の現状と課題について考察を深めていきたい。この問題は、スポーツに関わるすべての人々にとって、避けて通れないテーマなのである。